「鳳仙花」
中上健次の代表作のひとつ「鳳仙花」のなかに、主人公フサが戦時中に、「籠を背負って家を出たのは変わらなかったが、芋畑を横切ろうとしてそこが夢では一面に青い茎を出した麦畑だった事に気づき、その違いが妙な安堵をもたらした。春の日射しが濃く、駅の機関区を見るとまるで戦争などないというように静まり返り、機関区が背にした千穂ガ峰のはずれの山はくっきりと濃い緑におおわれている。」という描写がある。「鳳仙花」では、秋幸ひとりを連れて他所の土地に行こうと「ホームに身をかくすように立」つ、フサの姿も描かれている。

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