架空の「夏ふよう」
中上作品の「路地世界」を彩(いろど)るのが「夏ふよう」。正式な植物名ではなく、架空の花。白い花を咲かせ、甘い匂いに引き寄せられて、金色(こんじき)の小鳥が群れて舞う。「枯木灘」系の作品では「夏ふよう」と表記され、「千年の愉楽」系の作品では「夏芙蓉」と表記。「芙蓉」は秋の季語だが、「夏芙蓉」は盛夏を象徴する花。「芙蓉」は「蓮(はす)の花」の漢名だが、蓮池を埋め立ててできた「路地」を象徴してもいる。

戻る