「いただき」の魚売り
写)三輪崎海岸をゆく「いただき」の魚売り。大正時代
頭上に物を載せて運ぶ習慣は全国的にすっかり廃(すた)れてしまったが、熊野地方では比較的に遅く、戦後まで残った。「いただき」とよばれるこの習慣は、熊野市の漁村などにも多く見られたが、新宮には三輪崎から盥(たらい)を頭に乗せた婦人たちが魚売りにきた。新宮の旅館や料亭が主たる顧客であったが、西村伊作の「我に益あり」に記述されているように、西村家もお得意であった。「サイレお買いなはりまし」「シビお買いなはりまし」と町を売り歩く声の美しさが、ひとつのメロディーを奏(かな)でていたと言う。熊野地方で言う「サイレ」はサンマ、「シビ」はマグロのこと。
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