数々の奇行(きこう)のエピソード
「大逆事件」で刑死した弟誠之助の遺骨を新宮に持ち帰った時、誰もが骨壺だと大切に奉(たてまつ)ったものが、酉久愛用のラッキョの壺であった、という話も。謡曲(ようきょく)も自己流であるが玄人肌(くろうとはだ)、誠之助の死刑判決が出た日、大声で謡(うた)いをし、周(まわ)りの人々をあわてさせた。誠之助の遺体引き取りの際に、「思ひきや楽しき園に咲く花を我れより先に行きて見んとは」という歌を、酉久は詠(よ)んでいる。

戻る