幸徳秋水(こうとく・しゅうすい)の講演
1908(明治41)年頃、浄泉寺で毎月のように「談話会」が開かれていた。大石誠之助、沖野岩三郎、それに場所を提供している高木顕明。それぞれが交代に話をすることもあり、外から訪れてくる者が話すこともあった。「政談にわたらざること」という条件付き。この年、8月3日、大石誠之助宅に滞在していた社会主義者幸徳秋水が講演した。その内容は、新聞記事や、新宮中学教諭小野芳彦(おの・よしひこ)の日記から多少推測できる。聴衆は30人くらい。「社会主義より見たる自然主義観」というような題であったらしい。必ずしも無政府主義を肯定した内容ではないが、若者たちに無政府主義の存在や意味を知らせ、研究の機縁(きえん)を作ったようだ。

戻る