野口冨士男(のぐち・ふじお)著「なぎの葉考」
写)「なぎの葉考」(豆本・縦7.5センチ×横10センチ)

「浮島」遊郭の、花柳界に生きる女性とのはかない交流を描いた、珠玉の短編「なぎの葉考」。新宮の速玉大社の神木「梛(なぎ)の木」からの命名。作者の野口冨士男(のぐち・ふじお・1911-1993)は、徳田秋声(とくだ・しゅうせい)や永井荷風(ながい・かふう)の優れた評伝を残している。若い時に遊んだ場所を、老年になって再訪、時間が自在に横断する内容。新宮の案内を務めた若い作家間淵宏は中上健次がモデル。中上は、老境になってからの野口作品を高く評価。「なぎの葉考」は、1980年川端康成文学賞を受賞。現在、「野口冨士男短編集・なぎの葉考・少女」(講談社学芸文庫)に収録。書誌的なことを記せば、豆本「なぎの葉考」が恩田雅和の努力で昭和63年2月「続田奈部(たなべ)豆本第五集」として、有田郡清水町の保田(やすだ)紙の和紙を使用して、田辺の工房で製作されている。

戻る