中上健次「枯木灘(かれきなだ)」の終末場面
写)献辞と書き込み

中上健次の代表作一作となれば、多くの人が上げるのが「枯木灘」であろう。芸術選奨新人賞受賞の、この作品の最後のクライマックス、お盆の精霊送りの日、主人公の秋幸が腹違いの弟秀雄を殺害する場面が熊野川川原である。異母弟殺害の問題は、次作「地の果て 至上の時」のテーマに受け継がれてゆく。 「枯木灘」は皮製特装本が数部刊行されているが、そのうちの一冊を中上は熊野の俳人松根久雄に贈り、作品のなかのことば「秋幸はその路地が孕(はら)み、路地が産んだ子供も同然のまま育った」と、揮毫(きごう)している。この本は、いま、新宮市立図書館内の「中上健次資料収集室」に保管されている。

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