西村伊作(にしむら・いさく)の画、本州製紙付近
西村伊作には、二科会に入選するほどの画の力があったが、「市田川の橋から熊野地の松と煙突をのぞむ」と題された油彩画が残されている。制作年ははっきりしないが、熊野地風景を知る上では貴重なもの。市田川は新宮の街中を流れ、千穂ケ峰山麓から橋本、熊野地の田んぼを流れ本流に注ぐ。鮒やナマズ、シジミが取れた時期もある。1912(明治45)年紀熊製紙所がハトロン紙製造を始め、その後熊野製紙、富士製紙、王子製紙、本州製紙へと発展を遂げたというから、煙突が目立ち始めた大正初期の風景であろう。

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