中上文学に登場する「礼如(れいじょ)さん」と「オリュウノオバ」
高木顕明が逮捕された後、浄泉寺がしばらく無住となったころ、田畑禮吉(れいきち・法名は禮静)が、もともとは靴職人であったが、得度(とくど)もせぬまま袈裟懸(けさが)けで被差別部落の家々を回るようになる。中上文学に登場する「礼如さん」のモデルである。「千年の愉楽」のオリュウノオバのモデル・田畑リュウは妻。産婆という設定は、中上の虚構。1980(昭和55)年、89歳まで生きたリュウは、中上健次に小説の素材を多く提供した。

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