『煉瓦(れんが)の雨』
1918(大正7)年福永書店から刊行。「自転車」ほか9編を収録。表題となっている「煉瓦の雨」は、大石誠之助の遺児たちがモデル。西村伊作の父母が、濃尾大地震で「煉瓦の雨」に撃(う)たれて即死したことを表す。高木顕明をモデルにした「彼(か)の僧」。高木や成石平四郎と思(おぼ)しき人物が登場する「山鼠(やまねずみ)の如(ごと)く」は、新宮中学のストライキ事件がモデル。巻末に、与謝野寛(よさの・ひろし)・晶子(あきこ)夫妻や佐藤春夫らの跋文が載っていて、沖野の交友がうかがえて貴重。

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