龍鼓の滝の下あたりに山荘を構えたい
佐藤春夫の『日本の風景』の「(2)父の家」には、次のように述べられている―「父は、また町のはづれ王子ケ浜の王子権現の祠(ほこら)のうら手にある松山の小さな盆地のなかに芋畑(いもばたけ)をつくり柿やみかんを植ゑて晩年はこの地に隠居して松琴鼓濤(しょうきんことう)の間に老いたいと云つてゐた。父の空想してゐた隠居所はもうひとつ西山のほとんど中央にある竜鼓滝(りゅうごのたき・ママ)の渓流(けいりゅう)に沿つた竹林のなかにもあつた。この方は毎日、診察室の窓から滝を眺めてはその下の土地を想望(そうぼう)して心に清閑(せいかん)を楽しんでゐる様子であつた。」

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