作家下村悦夫(しもむら・えつお)の生家
佐藤春夫と同じころ文学的な出発を始める下村悦夫(本名悦雄・1894-1945)は、新宮、池田町の生まれ。現在の池田1丁目付近である。 講談読み本作家「紀潮雀(きのちょうじゃく)」として出発を始めた悦夫は、1925(大正14)年雑誌「キング」が創刊されると、大衆作家として頭角(とうかく)を現し、「悲願千人斬(ひがんせんにんぎり)」の連載を開始、たちまち大衆文学を牽引(けんいん)する働きをする。当初は新宮の地で、口述筆記の形で執筆を続けたと言う。時代小説を中心とする大衆作家として名を成したのちも、和歌への執着は捨てがたく、短歌雑誌の刊行なども手がけ、1941(昭和16)年には歌集「熊野うた」を自費出版、佐藤春夫が装幀、題字、表紙絵を描き、そこに序文を寄せて、友情を温めている。

戻る