「本歌(ほんか)取り」ということ
先の「万葉集」の「苦しくも」の歌を、不動の有名な歌にしたのは、藤原定家(ふじわらさだいえ・1162-1241)の「駒とめて袖(そで)うち払ふかげもなしさののわたりの雪の夕暮」が作歌されたからである。「馬をとどめて袖に積もった雪を払う物陰すらない、佐野の渡し場の雪の夕暮れは」の意味。「本歌取り」のお手本とされた。「本歌取り」というのは、先人の和歌や連歌(れんが)の言葉や趣向を借りて作歌することで、定家の歌は、「万葉集」の長忌寸奥麿(ながのいみきおきまろ)の歌を下敷きにして、雨を雪に変え、無季の歌を冬の歌にしている。


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